入門!論理学 読解
目次 かつ 読書メモ
第1章 あなたは「論理的」ですか?
「論理的」って、どういう意味だろう?
論理は非常識か?
論理学が扱う推論とはどういうものか
ここで、
常識や経験から判断しておそらく言えるだろうというタイプの結論の導き方を「推測」とする
論理的な結論の導き方に対して「推論」とする
推論とは
いくつかの前提からなんらかの結論を導くもので、その導出が絶対確実なもの
前提を認めたならば結論も必ず認めなければならないもの
推論、演繹、演繹的推論
論証と導出を区別しよう
https://gyazo.com/c7a761a6e463fbff63495d40bbac11cc
前提から結論を導出する
その全体を論証という
ちょっと論理力をテストしてみましょう
論理学って何のためにあるのだろう
論理を知らないひとには、そもそも論理学の教科書がよめるはずもありません
論理学というのはそのような文法の一部門だと思っています
論理のことばたち
否定語と接続語で、ひとつのまとまりを作る。論理学はこのことばたちを巡ってひとつの完結した論理体系「命題論理」を作り上げる
否定語「ではない」
接続語「そして」「または」「ならば」
さらにもうひと組、「すべて」「存在する」が加わって現代の標準的な論理学の扱う語彙が揃う。この論理体系を「述語論理」と呼ぶ 第2章 「否定」というのは、実はとてもむずかしい
ひとはどういうときに否定するのだろう
私はあなたのことが好きではない
論理学が扱う否定は、日常的な日本語の否定表現に含まれる、その純粋な核みたいなもの
肯定するか、否定するか、どっちかしかない?
A または ( A ではない)
「 A 」か「 A ではない」のどちらか。その中間を排する
あいまいな概念を排す
勇気と盲腸の違い
排中律を認めるか認めないかで、その論理体系の性格が決定的に違ってくる 複数ありうる論理体系の中で排中律を認める標準的な体系を採用することが、それとともにひとつの立場(これはもう、「哲学的」な立場と言えるものだ)を引き受けることでもあるのだ 勇気と盲腸とは
人間がそれを観察するチャンスがあるかどうかに、その存在が関係してしまうような、そういう存在かどうか
実在論的立場
神の視点
標準的な論理体系
反実在論的立場
人間の視点(認識)
非標準的な論理体系
標準的な論理体系を支える考え方では、実在論的立場をとると同時に、それらをあたかも神の視点から見るようにして、捉える
人間の認識なんていう不完全で限定したものに縛られない
二回否定すると肯定になるのか?]
二重否定則
二重否定入れ
A → ( A ではない) ではない
二重否定取り
( A ではない) ではない → A
排中律を認めないと「 A ではない」がまちがいだからといってただちに「 A 」だということにはならない 私たちがめざしている標準的な論理体系は、排中律を認めるのであるから、二重否定則を両方とも(「入れ」も「取り」も)認めるものである ややもすればあたりまえともとられかねない標準的な道が、実は根本的な哲学的問題を見すえたひとつの決断、ひとつの選択になっているのだ
二重否定取りを認めることは「神の論理」を採用することだなんて、思ってもみなかったでしょ?
矛盾の形
矛盾
A かつ ( A ではない)
矛盾は必ず否定される → 矛盾の否定は必ず正しいものとされる
矛盾律
( A かつ ( A ではない))ということはない
背理は否定される
背理法
「 A 」を仮定して矛盾が導かれるとき「 A ではない」と結論してよい
否定の論理
第3章 「かつ」と「または」
論理と接続詞
接続詞の場合も、論理学の扱い方は日常的な日本語の接続表現をそのままに取り扱うというものではなく、そこに含まれる純粋な「接続の型」を取り出すもの
三つの接続の型、「かつ」「または」「ならば」
「かつ」 の入れ方・はずし方
https://gyazo.com/92b99291772d55d8ef5a2148dae4932f
論点は一般的です
その組み合わせがあればいい、というものです
導入則
「かつ」を用いた主張が、他のどういう主張から導かれるのか
かつ入れ
A 、 B → A かつ B
除去則
「かつ」を用いた主張から、他のどういう主張が導けるのか
かつ取り
A かつ B → A
A かつ B → B
「かつ」の仲間たち
「そして」
「 A そして B 」
例えば「 A 、B 、 A は B に先行する → A そして B 」
「しかし」
「 A しかし B 」
例えば 「 A 、 B 、 A と B は両立しがたい → A しかし B 」
いずれも「かつ」という接続の型を含んでいる
つまり、ここで規定した「かつ」は「かつ」の仲間たちに共通の、その中心的意味を担っている
このような純粋な「かつ」という接続の型を「連言」と呼ぶ
ひとが「または」と言うとき
「または」の導入則
または入れ
A → A または B
B → A または B
A と B は無関係
A = サンマは魚だ
B = 埼玉県にはブラックホールがある
この場合「 A または B 」 は正しい主張となる
A と B の間に「適当な関連性」がなくてもいいのか?
「適当な関連性」というのがなんなのか? それは手強い
「または」の意味の核心だけを取り出す
「 A または B 」が主張されたとしてその主張が正しいのは「 A 」が正しいか「 B 」が正しい場合であり、このことだけを「または」という語の導入則として取り出す
こうすれば 「または」は取れる
「または」の除去則
または取り
A または B → A ?
A または B → B ?
そんなに単純にはいかない
消去法
A または B、 A ではない → B
A または B、 B ではない → A
このような「または」の接続の型を「選言」と呼ぶ
「かつ」と「または」を否定すれば
さて、ここまで、否定・連言・選言をそれぞれ見てきました。その導入則と除去則は、否定・連言・選言の意味を規定するという点で、基本的な論理法則です。そしてこれは、ひとつの野心を秘めたものになっています。つまり、否定・連言・選言に関する演繹的推論はすべてここで取り出した導入則と除去則を使えば証明できる、そう考えているのです。
否定・連言・選言に関するすべての論理法則が証明可能なのです
ド・モルガンの法則
( A または B ) ではない ←→ ( A ではない) かつ ( B ではない)
( A かつ B ) ではない ←→ ( A ではない) または ( B ではない)
✗✗ ←→ 〇〇
✗✗ → 〇〇
「✗✗」が成り立つならば、そのとき必ず「〇〇」も成り立つ
〇〇 → ✗✗
「〇〇」が成り立つならば、そのとき必ず「✗✗」も成り立つ
このとき「✗✗」と「〇〇」は「論理的に同値」と言う
つまり「ド・モルガンの法則」は、
https://gyazo.com/1c189a11e7e61125f9bb5f9fde2727ff
選言の否定 ←→ 否定の連言
連言の否定 ←→ 否定の選言
太郎と花子とイグアナとカメレオン
次の主張に対する否定をド・モルガンの法則を用いて書き換える
太郎はイグアナとカメレオンの両方を飼っている
(太郎はイグアナを飼っている) かつ (太郎はカメレオンを飼っている)
↓ 否定
(太郎はイグアナを飼っている) かつ (太郎はカメレオンを飼っている) ということはない
↓ ド・モルガンの法則を適用
(太郎はイグアナを飼っていない) または (太郎はカメレオンを飼っていない)
太郎はイグアナかカメレオンの少なくともどちらかを飼っている
花子はイグアナかカメレオンの少なくともどちらかを飼っている
(花子はイグアナを飼っている) または (花子はカメレオンを飼っている)
↓ 否定
(花子はイグアナを飼っている) または (花子はカメレオンを飼っている) ということはない
↓ ド・モルガンの法則を適用
(花子はイグアナを飼っていない) かつ (花子はカメレオンを飼っていない)
花子はイグアナもカメレオンも飼っていない
太郎か花子の少なくともどちらかは、イグアナとカメレオンの両方を飼っている
(太郎はイグアナとカメレオンの両方を飼っている) または (花子はイグアナとカメレオンの両方を飼っている)
((太郎はイグアナを飼っている) かつ (太郎はカメレオンを飼っている)) または ((花子はイグアナを飼っている) かつ (花子はカメレオンを飼っている))
((太郎はイグアナを飼っている) かつ (太郎はカメレオンを飼っている)) を A とする
((花子はイグアナを飼っている) かつ (花子はカメレオンを飼っている)) を B とする
A または B
↓ 否定
( A または B ) ではない
↓ ド・モルガンの法則を適用
( A ではない) かつ ( B ではない)
( A ではない)
((太郎はイグアナを飼っている) かつ (太郎はカメレオンを飼っている)) ではない
↓ ド・モルガンの法則を適用
(太郎はイグアナを飼っていない) または (太郎はカメレオンを飼っていない)
太郎はイグアナかカメレオンの少なくともどちらかを飼っていない
( B ではない)
A の太郎を花子に置き換え
(花子はイグアナを飼っていない) または (花子はカメレオンを飼っていない)
花子はイグアナかカメレオンの少なくともどちらかを飼っていない
( A ではない) かつ ( B ではない)
太郎も花子も、イグアナかカメレオンの少なくともどちらかを飼っていない
ド・モルガンの法則を導いてみる
導入則と除去則の全部
否定の導入則(背理法)
「A」を仮定して矛盾が導かれるとき、仮定を否定して「Aではない」と導ける
否定の除去則(二重否定取り)
(Aではない)ではない → A
連言の導入則(かつ入れ)
A、B → AかつB
連言の除去則(かつ取り)
AかつB → A
AかつB → B
選言の導入則(または入れ)
A → AまたはB
B → AまたはB
選言の除去則(消去法)
AまたはB、Aではない → B
AまたはB、Bではない → A
証明する
(a) 選言の否定 → 否定の連言
(b) 否定の連言 → 選言の否定 (選言の否定 ← 否定の連言)
(a) (AまたはB)ではない →(Aではない)かつ(Bではない) の証明
前提は「(AまたはB)ではない」
結論は「かつ」で繋がれた主張なので、「かつ」を入れるためには「 Aではない」と「 Bではない」を両方示せば良い(かつ入れ)
「 Aではない」を導くには、背理法を用いる。
ここで「 A 」を仮定する
「 A 」が成り立つので、「 AまたはB 」が導ける(または入れ)
とすると、「 AまたはB 」は前提「(AまたはB)ではない」と矛盾する。
であるので、仮定を否定して「 A ではない」が導ける
同様に「 B 」を仮定する
「 B 」が成り立つので、「 AまたはB 」が導ける(または入れ)
とすると、「 AまたはB 」は前提「(AまたはB)ではない」と矛盾する。
であるので、仮定を否定して「 B ではない」が導ける
最後に、この二つ「 A ではない」と「 B ではない」を「かつ」でつないで「(Aではない)かつ(Bではない)」が導ける
(b) (Aではない)かつ(Bではない) → (AまたはB)ではない の証明
前提は「(Aではない)かつ(Bではない)」
結論は否定なので、背理法を用いる
ここで「 A または B 」を仮定する
前提の「(Aではない)かつ(Bではない)」から「 Aではない」と「 Bではない」を導く(かつ取り)
この「 A ではない」と仮定の「 A または B 」から「 B 」を導く(消去法)
「 B 」と「 B ではない」は矛盾する
そこで仮定を否定して「(AまたはB)ではない」が導ける
第4章 「ならば」の構造
「ならば」で困った
「ならば」は条件法と呼ばれる
条件法の導入則 (ならば入れ)
「 A 」を仮定して「 B 」が導かれるとき、「 A ならば B 」と結論してよい
条件法の除去則 (ならば取り)
A 、 A ならば B → B
条件法の導入則で言う「導かれる」ということばは「演繹的に推論される」という意味
背理法と同様の意味
日常語と大いに異なるという点での「困った」
「ならば」のはずし方
「 A 、 A ならば B → B 」
前提肯定式という名前
「肯定式」とも呼ばれる
https://gyazo.com/a6d5802b3a2ca73dc992445df03a1365
「 A 、 A ならば B → B 」の意味
「 A ならば B 」 だけからは「 A 」と断定することも「 B 」と断定することもできない
「 A ならば B 」 という主張の中における A はあくまでも条件、あるいは仮定としての A である
除去則を考える時には、「 A ならば B 」 という主張に「 A 」という前件の肯定を組み合わせて「ならば」のない(ならば取り)主張「 B 」を結論する、という手順になる
導入則をどうしよう
「ならば」の否定
( A ならば B ) ではない → A かつ ( B ではない)
対偶をとる
「ならば」の連鎖
推移律
A ならば B 、 B ならば C → A ならば C
第5章 命題論理のやり方
私たちはいまどのあたりにいるのか
証明するとはどういうことか
(( A ではない) ではない) かつ B → A かつ B
1. (( A ではない) ではない) かつ B 〔前提〕
2. ( A ではない) ではない 〔 1 と、かつ取り(連言の除去則)〕
3. A 〔 2 と、二重否定取り(否定の除去則)〕
4. B 〔 1 と、かつ取り(連言の除去則)〕
5. A かつ B 〔 3 と 4 と、かつ入れ(連言の導入則)〕
「かつ B」がくっついているのでダイレクトに二重否定取りは使えない
地道に一つずつ導入則と除去則を使って解いていく
論理命題と推論規則
証明も、けっこう楽しい
B ではない、 A ならば B → A ではない 〔否定式〕
1. B ではない 〔前提〕
2. A ならば B 〔前提〕
3. A 〔背理法の仮定(結論が「 A ではない」と否定形なので否定の導入を考える〕
4. B 〔2 と 3 と肯定式(ならば入れ:条件式の除去則)〕
5. ( B ではない) かつ B 〔 1 と 4 とかつ入れ(連言の導入則)〕→〔矛盾〕
6. A ではない 〔 3 と 5 と背理法〕
A または B 、 A ならば C 、 B ならば C → C 〔いずれにせよ論法〕
1. A または B 〔前提〕
2. A ならば C 〔前提〕
3. B ならば C 〔前提〕
4. C ではない 〔背理法の仮定(結論が「 C 」なので否定の導入を考える〕
6. B 〔 1 と 5 と消去法(選言の除去則)〕
7. C 〔 3 と 6 と肯定式(条件式の除去則)〕
8. ( C ではない) かつ C 〔 4 と 7 とかつ入れ(連言の導入則)〕 → 〔矛盾〕
9. ( C ではない) ではない 〔 4 と 8 と背理法〕
10. C 〔 9 と二重否定取り(否定の除去則)〕
(( A ではない) ではない) または B → A または B
1. (( A ではない) ではない) または B 〔前提〕→ 〔「いずれにせよ論法」を使う〕
2. ( A ではない) ではない 〔1 と、ならば入れ(条件式の導入則)の仮定〕
3. A 〔 2 と、二重否定取り〕
4. A または B 〔 3 と、または入れ(選言の導入則)〕
5. (( A ではない) ではない) ならば ( A または B ) 〔 2 と 3 と、ならば入れ(条件式の導入則)〕
6. B 〔1 と、ならば入れ(条件式の導入則)の仮定〕
7. A または B 〔 6 と、または入れ(選言の導入則)〕
8. B ならば ( A または B ) 〔 6 と 7 と、ならば入れ(条件式の導入則)〕
9. A または B 〔 1 と 5 と 8 と、いずれにせよ論法〕
(( A ではない) ではない) または B 、
(( A ではない) ではない) ならば ( A または B ) 、
B ならば ( A または B )
→ A または B
ほしい論理法則・ほしくない論理法則
二つのアプローチ
証明可能性と妥当性
妥当性とは「反例を見いだせない」ということ
公理系
出発点となる論理法則を規定して、それだけを用いてさまざまな論理法則を証明していく体系を「公理系」と呼ぶ
出発点となる論理法則を「公理」と呼び
証明された論理法則を「定理」と呼ぶ
形式的体系、形式的アプローチ
公理系(証明)は命題の形式、命題の型だけを扱う
これを形式的体系、形式的アプローチと呼ぶ
意味論、内容的アプローチ
妥当性を論じるやり方は命題の型(例えば、 A または B → A)に具体的な命題の事例を考える(例えば「ホトトギスはホーホケキョと鳴く」)
これを意味論、内容的アプローチと呼ぶ
真偽
命題が正しいときは「真」
命題が間違っているときは「偽」
真理関数
「健全」で「完全」な公理
過剰ではないことと、不足ではないこと
健全
その公理系は妥当な論理法則だけを証明して、妥当ではない論理法則まで証明してしまうようなことがない
完全
その公理系は妥当な論理法則のすべてを証明することができる
いろいろな公理系が作れる
遠くにゲーデルの不完全性定理が見える
第6章 「すべて」と「存在する」の推論
この推論はどう扱おう
全称と存在
全称文
「すべてのものは F である」
↓
(a は F である) かつ ( b は F である) かつ ( c は F である) かつ ………
全称文は連言(かつ)に置き換えることができる。ただし無限
存在文
「 F であるものが存在する」
↓
((a は F である) または ( b は F である) または ( c は F である) または ………
存在文は選言(または)に置き換えることができる。ただし無限
全称と存在のド・モルガンの法則
連言の否定 ←→ 否定の選言
選言の否定 ←→ 否定の連言
全称と存在のド・モルガンの法則
全称の否定 ←→ 否定の存在
(すべてのものは F である) というわけではない ←→ ( F ではない) ものが存在する
(すべての x に対して ( x は F である)) ではない ←→ (ある x が存在して ( x は F ではない))
存在の否定 ←→ 否定の全称
( F である) ものが存在しない ←→ すべてのものは ( F ではない)
(ある x が存在して ( x は F である)) ではない ←→ (すべての x に対して( x は F ではない))
世界に三匹のブタしかいなかったら
「すべての男はバカである」の論理構造
すべての x に対して ( x が男である、ならば、 x はバカである)
すべての F は G である ←→ すべての x に対して ( x は F である、ならば、 x は G である)
「バカな男がいる」の論理構造
ある x が存在して( x が男である、かつ、 x がバカである)
F である G が存在する ←→ ある x に対して ( x は F である、かつ、 x は G である)
「すべて」と「存在する」を組み合わせる
命題論理の公理
量化に関する公理
全称導入
At → すべての x に対して 〔Ax〕( t は任意性を持つこと)
全称除去
すべての x に対して 〔Ax〕 → At ( t は任意)
存在導入
At → ある x が存在し 〔Ax〕
存在除去
ある x が存在し 〔Ax〕 、 Aα ならば C → C ( C は α を含まない)
論理学のやり方
おわりに